約1億年前(98.89+/-0.62 Ma)に起源をもつ、恐竜時代のビルマ琥珀(バーマイト)の虫入りです。体長約1.1mmの非常に珍しい Trichopseniini族のヒゲブトハネカクシが含まれています(属は後日同定してみます)。黄色透明の琥珀で、虫体の背面・腹面とも細部までクリアに観察できる分類学的研究向きの標本です。現生のこの族のタクサはすべてが白蟻と深い関係にあり、同様に特殊化した形態から、白亜紀のタクサも既に「好白蟻性」を獲得していたと推定されています。注目すべきは虫体周辺に散乱している俵型のコプロライト(糞化石)で、シロアリ類のそれを想起させます。中生代のシロアリの糞化石の研究の一例として、次の論文を挙げておきます(画像検索で糞の形状をご確認ください):Colin, J-P. et al. 2011. Termite coprolites (Insecta: Isoptera) from the Cretaceous of western France: A palaeoecological insight. Revue de Micropaleontologie, 54(3): 129-139.現生シロアリ各種の糞形状と比較することでシロアリのサイズが推定でき、ビルマ琥珀のシロアリの種(ホスト)が推定できるかもしれません。であれば太古の好白蟻性を補強する重要な間接的証拠になり得ます。いずれにしろ中生代の好白蟻性の昆虫はこれまでのところほとんど事例と論証がなく、「好白蟻性」そのものの起源を考える上でも非常に興味深い標本と言えます。琥珀の大きさ:21x15x5.5mm#6377画像1:ハネカクシ背面・腹面(上)、自然光・黒背景での琥珀全景(下)画像2:ハネカクシ背面1画像3:ハネカクシ背面2画像4:ハネカクシ腹面画像5:ハネカクシと糞化石画像6:自然光・白背景 画像7:透過光画像8:自然光・手のひら画像9:自然光・白タイル背景画像10:自然光・黒背景での蛍光反応(上)、UVライト照射時の蛍光反応(下)